こんにちは、アールティ営業部の渋谷です。
昨年11月にご紹介した事例に続き、アールティの研究開発向け上半身人型ロボットSciurus17の活用事例をご紹介します。
大阪府和泉市に本部を置く地方独立行政法人大阪産業技術研究所の電子・機械システム研究部 知能機械研究室では、Sciurus17を使ったロボット制御の研究開発成果をYouTubeで公開しています。
同研究所が行っている開発内容、開発を通じて実現したい未来像について、電子・機械システム研究部部長の北川様、知能機械研究室主任研究員の赤井様、研究員の宮島様の3名にお話を伺いました。
大阪産業技術研究所の活動について
北川様、赤井様、宮島様:よろしくお願いします。
北川様:当研究所は大阪にある公設試験研究機関(公設試)です。大阪府立産業技術総合研究所と大阪市立工業研究所が平成29年に統合してできた新しい研究所です。
中小企業を対象に技術支援を行っており、技術相談をお受けしたり依頼試験を実施するほか、我々が持つ装置を使っていただくことも、共同研究をすることもあります。
例えば技術相談は年間8万7千件ほどあります。
大阪府内の企業に限らず関西圏、または日本全国から多くの方が利用にいらっしゃるので、地域の枠を超えた活動をしております。
研究成果を論文発表することもあり、他には講習会、セミナー、人材育成などにも幅広く取り組んでいます。
電子・機械システム研究部は、電子デバイス研究室と知能機械研究室の2つからなっており、知能機械研究室では、自動計測、システム開発、ロボット、AI、最適化の技術支援を行っています。
元々はFA(ファクトリー・オートメーション)からスタートした研究室なのですが、時代のニーズに合わせて研究開発の幅を広げています。
宮島様:現在開発しているのは、産業用システムをROSで動かす技術です。
同じROSというプラットフォームを使って様々なFA機器(生産工程を自動化するためのセンサやロボットなど)を動かせると、中小企業の工場も効率的に稼働できるようになると思います。
最近はより商用化、実用化に向けてバージョンアップがされたROS 2が出てきたので、ROS 2を使った開発も始めています。
例えば、産業用モータをROS 2で動かしてRViz(※1)で表示したり、もしくは汎用のセンサをmicro-ROS(※2)を使うことでROS 2でセンサデータを取り込めるようにし、RVizで表示するといったようなことです。
※1 RViz:ROSが提供している可視化ツール
※2 micro-ROS:ROS 2をマイコン上で動作させるためのフレームワーク。移植性の高さや軽量、省メモリな動作が特徴。
宮島様:これらの技術の実用化に向けて、中小企業の生産現場に近いラインを作り、産業用モータを組み込み、Sciurus17や他のロボットを置いてROSで連携させています。
ベルトコンベアが動く、センサがある等の基本的な要素は揃って来たので「どういうデモにして、中小企業の方に利便性が伝わり、欲しいと思っていただける技術にするか」をこれからやろうとしています。
ROSで開発を始めたきっかけは?
宮島様:両方あります。モーションキャプチャを使って人が書いた文字と同じ筆跡でSciurus17に文字を書かせた例(※3)は自分達で考えて始めたことですし、中小企業の方から「人が集まらないから自動化ができないか」というご相談をいただき、それをROSで解決できないかと考えて、最近は工場ラインでの活用を想定したデモとして、ベルトコンベアで運ばれる箱を取るシステムを作りました(※4)。
※3 ROSを用いたアームロボット制御 モーションキャプチャを用いた動作教示(YouTube、テクニカルシート)
※4 近日YouTube動画公開予定
研究内容を広く知らせるために
宮島様:まさにそれが我々がやろうとしていることです。「こういうことも出来るし、ああいうことも出来る」という事例を出来るだけ沢山出すことで、大阪産業技術研究所が手伝えることがあると知ってもらうことが第一だと思っています。
赤井様:YouTube動画を公開したり、講演時にロボットについてお話したり、少しずつ色んなチャンネルを使いながらROSを広めるしかないと思ってます。
後はデモで「ここまで出来ます」と見せて「じゃあやってみよう」という思いを引き出すところだと思います。
宮島様:テクニカルシートという紙面にして研究所に置いたり、このご時世で減っていますが、技術講習会を年に数回行っています。
展示会が開催されていた頃は、ポスターで出展していました。
今は、コロナ禍が明けた時に出せるものを蓄えておこうという感じです。
赤井様:本格的に始まったのは、研究所内でロボットの研究プロジェクトを立ち上げた平成28年頃です。現在はロボットだけではなく、深層学習も組み合わせたプロジェクトとして進んでおり、今年度末でプロジェクトが一区切りつく見込みです。
赤井様:我々としては、プロジェクトで蓄えた成果を発信していくのが次の段階だと思っています。もう少し現場に即したデモにして動画をお見せするとか、研究所内に展示するとか、これにAI的なものを組み合わせたラインにするなどして、中小企業の現場、導入責任者の方に見ていただくのが次の段階と考えております。
後編へつづく
インタビュー前編はここまで。
後編ではいよいよ、こうした取り組みの中で研究するロボットのひとつとしてご活用いただいているSciurus17について、購入されたきっかけや実際の使用感などをお聞きしていきます。