いつもショップブログを読んでくださってありがとうございます!
今日はC#の日なのですが、展示会等があり、準備が間に合わないので、書き溜めておいた別の内容にします。(C#の原稿が間に合えば、今週中にアップしますが、来週になってしまうかも)
ショップブログを1ヶ月ちょい続けた結果、ブログに対する反響もそれなりにありまして、ロボット屋さんの視点で業界動向などについての記事が読みたいと言って下さる方も多くなりました。そこで、社内とかで話題に上ったりしたことなどをちょこちょこ暇を見つけてyuki視点で書いたものを紹介します。
今回は独立を夢見る人たちに向けた「ロボット屋は夢のあるお仕事か?」という考えるきっかけになるお話のつもりです。(長文なのでご注意を。w)
メーカーズブームがやってきた?
アールティのショップブログを読んでる方の中にも技術に覚えがあったり、ロボット作れるから就職や転職も厳しいし、昨今のメーカーズブーム(※)だし、ちょっと起業でもしてみしようかななんて思ってる人も中にはいるでしょう。
2012年のGoogle I/O 世界中からIT系デベロッパーが集まってくる
それに、私たちでもよく他の業界の方から、「ロボットは夢のあるお仕事ですね」なんて言われます。本当にそうなんでしょうか?そして、そう思っている方々には夢を砕くようで大変申し訳ないとは思うが、あえて言いたい。
「ロボットは夢のある仕事?ロボット屋にとっては目の前にある現実なんですけどー。w」
日本でもクリス・アンダーソン氏の本が翻訳されて出版されたり、マイクロものづくりなどの本が出版されてにわかにブームになりつつありますね。でも、私は、あれって日本ではちょっと難しいんじゃないかなと思っていたりします。ではなぜ、アメリカはメーカーズブームで成功しているように見えるのか、ちょっと紐解いてみましょう。
語学とメーカーズ
ここで「語学」と聞いて、気がついた人はたぶんこのメーカーズブームで成功できる可能性があります。w
よく知られているようにアメリカは、もともとDIYの気質が強い国です。ガレージでいろいろ作るのは普通のことですし、AppleやHPももともとはガレージが発祥の地です。
じゃあなんで昔はメーカーズブームがなかったのか?と思う向きもいるでしょう。昔は、機材が高かったり、職人芸でないと仕上げられないことが多かったので、なかなか参入できなかったと言う理由もあります。いわゆる参入障壁ですよね。アメリカにもかつては大量生産の工場があった時代があり、今の空洞化は日本と同じく労働力の安い海外に流れていったというのが実情です。
名だたる米国IT系企業の女性幹部パネルディスカッション(2012年)
ここ最近は、アメリカでも製造業の国内回帰が叫ばれていて、AppleやGoogleが情報端末機材の米国生産を表明したりしています。これには、いろいろな将来展望を踏まえた戦略も含まれているのですが、オバマ大統領は2012年の再選をうけて、景気回復の指針の中でロボット開発やメーカーズの後押しをすると表明しました。こういったアメリカのバックアップには、次のような背景があります。
1. IT系が次世代イノベーションを狙い始めた
2. ロボット化された生産業務であれば製造コスト(主に人件費)を抑えて、かつ品質は保てる
3. 英語は世界共通言語である
海外のIT系の経営者層と話をしていると必ず出てくるのが、ものづくりを通したイノベーションを起こしたいという機運がたかまっている、という話題です。日本でもすでに言われ始めたように、アメリカではIT関連の仕事は飽和しはじめています。労働力としてのプログラマもピンきりはあるもののそれなりにたくさんいて、しかもクラウド化され世界中で流動性も高くなってきています。(ロボット屋に比べたらIT系は本当にたくさん経験者います。www)
こうなった時代でも、クラウド化されても、語学、ほとんどの場合は英語ができる人達が仕事にありつけるチャンスが増える状況になっています。つまり、この市場において英語が母国語の国は発注側でも受注側でも有利な立場にいます。そして、飽和しつつある結果、1件当たりの仕事が安い報酬になりつつあるのも事実です。
研究用ロボットアーム OROCHI 産業ロボットに代わって自分で開発できるロボットがこれからどんどん普通に使われるようになるかも
そのため、業界的にはデフレの状況が起こります。このような状況で次の金の卵を産むには、何らかのイノベーションが必要です。それはモノかもしれないし、サービスかもしれない。技術が高度化されてブラックボックス化した結果、理科離れは先進国諸国の大きな問題になっており、IT化が進みすぎて、バーチャルをリアルだと勘違いしている若者も多い昨今では、リアルに手を動かしてモノの手触りがわかる人が次のイノベーションの担い手だろうと経営層は感じてきているところです。
そして、ものづくりにおける海外流出の理由は「安い労働力」これに尽きます。要するに人件費の高騰が海外流出を招いているので、製造コストが低ければ、ものづくりでも勝てる場面が出てきます。そこが設計図さえ同じものならば均質なものが出来上がる、ロボット化が叫ばれる理由です。
インターネットと語学ができれば世界中から仕事がとってこられて、安価なロボットや機材で安価でそこそこな品質の品物が製造できれば、勝てる場面が出てくる可能性がある。ここが大きな背景だったのですね。
ロボット屋の出番ってあるの?
ここで、オバマ大統領がものづくりのメーカーズだけでなくロボットってあえて明言したのかはなぜか?を考えてみましょう。
皆さんは、ロボットってどういうものだと思いますか?
鉄腕アトムとか、ASIMOみたいなものだと思っていませんか?あるいは産業用ロボットとか。たしかに端的に言って、それらはロボットです。
しかし、オバマ大統領が意味する「ロボット」は、もっと広義にとらえるべきでしょう。これは、センサーユニットだったり、コンピュータに毛が生えた程度のものから、ほんとに手足が生えたロボットになっているものまでさまざまにあります。つまり、コンピュータ制御でサービスされるシステムのことをさしていることがほとんどです。すなわち、「ロボット」とわかりやすく言っているだけで、実はIT産業にチャンスが一番ある次世代技術であることに着目してください。
当然ではあろうけどオバマ大統領には相当賢いブレインがいるんだなと思います。
つまり、ロボットはリアルにリーチできるサービスができる技術分野であり、身体性を持ったIT産業だったんですよ。それなのに、日本人はこの「メーカーズ」について何を勘違いしたのか、IT産業ではなくて「ものづくり」であると思っている節がある。
#いつも日本で話してて噛み合わないよなぁとおもう場面がここです。
ここもやはり「語学力」が問題で、英語で書かれた海外のメディア情報を見ればちゃんとわかるはずの背景も、英語が苦手なばかりにちゃんと背景事情を探りもせず、雰囲気に流されて日本のブームになっているのでは、きちんと背景から理解している海外勢に勝てるわけがないと思うわけです。
#ちなみに、デザイナー系の人がいうメーカーズは「成功の可能性あり」です。デザインは価値ですからまねできない。
日本におけるメーカーズの好例という意味では、株式会社ミナロの緑川さんが始められたコマ大戦は中小零細企業の技術を持った人たちの技術力をアピールできて、地に足がついいていて、日本人気質にもあって非常によい取り組みだと思います。先日、大会を見に行かせていただきましたが、工場のものづくりにIT系の技術をもって海外に語学サービスができるところがはまればさらに伸びるんじゃないかなと思います。(マイクロものづくりの本がまさにそれを書いています。ただ、日進月歩どころか秒進分歩なIT業界にあって、スピードについていけないとやはり機会損失につながってまったく意味ないのであまり変なことはいえないから黙ってますが。w)
コマ大戦のコマ、精度だけでなく、工夫されたメカを見るのも魅力の一つ
さて、ロボット屋の出番ってどこにあるんでしょう?www
考えてみてください。w
語学とITと海外マーケティング
皆さんご存知かどうかわかりませんが、私が立ち上げにかかわっていたROBO-ONEをはじめた2002年ころは世界に人型ロボットのキットというのはなかったのですね。2004年に世界で初めて近藤科学からKHR-1が発売され、ものすごい人気になりました。当時私は別の会社にいたのですが、かのビル・ゲイツ氏が欲しいとのことで、マイクロソフトにKHR-1を販売したのをよく覚えています。その後も続々と日本のメーカーから人型ロボットキットが発売され、とても注目されました。
ところが、海外からも引き合いはたくさんあったにもかかわらず、日本のメーカーは海外展開を一切と言っていいほどやりませんでした。これにはマーケットとしての日本は中途半端に大きいので、海外にいかなくても売り上げとしても中小零細、中規模の部署には十分だったという事情もあります。そのため、海外勢の追い上げがきて、あっという間に追い越されました。
一方で海外の国では、人口比から言っても、ロボットマーケットなんて国内に存在しないのが普通なので、起業当時から海外展開を視野に入れないと伸びないという逆の事情があります。うちの技術スタッフも、「なんで英語ができないの?」とよく海外の取引先の技術者にからかわれてますが、海外のロボット関連企業に勤める技術者に聞くと「そもそも国外に派遣されることを前提になってるから英語ができないとエンジニアとして採用してもらえない」という事情があって、エンジニアであればほぼ英語が話せます。
これの意味するところは、英語での情報発信と海外販売展開を積極的にやるかやらないか、販売機会をどう増やすのかという企業のグローバルな営業戦略でもあります。国内のそこそこでいいやとという戦略をとった結果、後発の海外のメーカーにやられてしまい、現状、人型ロボットのサーボモータ市場で日本以外のシェアは日本メーカーにはありません。国内シェアもじわじわと海外メーカーにおされてきているのが現状です。
日本では、2035年には少子高齢化で人口が急激に減ると言われています。なぜここで少子化時代とあえて言うのか、というと、人口が減ればその分景気も減退するからです。言うまでもないことですが、経済活動は、人の活動量に直結してます。つまり、人口の数は力です。ものづくりを支えてきた世代は、人口も右肩上がりで高度経済成長期の恩恵を十分に受けた人たちなので、過去の栄光は人口の増加に支えられてきました。しかし、我々世代は、バブル崩壊、少子化、景気低迷が当たり前の時代での成功法を考え出す必要があります。
実は、人口が減ると言っても、戦前の水準まで減る程度です。戦前もそれなりの水準だったとはおもいますが、今の日本ほど豊かではなかった時代です。人口が少なくなれば、戦前当時のように、エリート層が日本をなんとかしようと外へ目を向けた時代の再現もありえます。アイデアと語学力、サービスとIT、さまざまなチャンスを生かしたグローバルマーケティングをすることが成功への近道です。
ここまで読んでみてロボット屋にチャンスはありそうですか?どうですか?w
ロボット屋に夢を持つのはいいことですが、現実を踏まえて、参入は戦略的に。w
ちなみに、アールティはパイが増えるというのと同義語なので、同業者が増えるのは大歓迎です。
#ちなみにあらかじめお断りしておきますが、起業のコンサルティングは有料です。w
メーカーズ解説
「21世紀の産業革命」というセンセーショナルなキャッチコピーで話題を呼んだ、クリス・アンダーソン氏の著書『MAKERS』からはじまった。同氏は、『ロングテール』、『フリー ~〈無料〉からお金を生みだす新戦略』などの世界的ヒット著作を持っている。WEB系なら彼の名前は知らなくても、「ロングテール」などの言葉くらいは聞いたことはあると思う。深く知りたい方は関連図書をどうぞ。
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