2021年12月13日更新
2013年投稿時の記事をほぼそのまま、製品情報等を最新のものに更新しました
リチウムポリマー電池(通称:LiPo、リポ)の発火に関する注意喚起が東京消防庁から出ました。
携帯電話などで発火事故があった!とか騒がれていた電池と言えば、ご記憶の方もいるでしょうか。
ロボット業界では有名なお話ですが、映像があったのでご覧いただきたいとおもいます。
リポは、知識があれば安全に運用できますし、、リポの大出力を実感されると思いますので、安全な使い方、保管、移動、廃棄方法についてご紹介します。
LiPoはニッケル水素(NiMH)などに比べて容量も大きく、軽く、放電性能もよいため、ラジコンやロボットにはよく使われています。
リチウムポリマー、リチウムイオン、中に使われている電解質(電解液)の組成の違いなので、どちらも成分はそれほど変わりません。
(リチウムイオンは液体、リチウムポリマーはポリマー電解質を使用しています。)
東京消防庁の実験ビデオ
東京消防庁が注意喚起のために公開しているビデオを紹介します。
容量2200mAhや4200mAhのLipoに対し、充電時の上限電流を越えた6Aや10Aのニッカド電池用充電器を使って過電流で充電し、しばらくすると発火しています。
電流に関する知識があれば避けられることですが、一般の方では「おんなじコネクタだしいいか」と思う人も多いのでしょう。
昔からロボットなどでLipoに慣れ親しんでいる人であれば、普通は1-2A上限の充電器で6Aも流す充電をすることはほとんどありませんし、ニッケル水素用の充電器で充電することもない話ですね。
いずれにしても東京消防庁からも注意喚起が出るほどになったということはリポが相当一般に浸透してきたことがわかりますね。
一番危ないのは、故障時です。
リポを燃やすとビデオとおなじく、本当に火柱が上がります。(安全策をしてある電池もあるので一概に燃えるとは限りません。電池やロットによります。)
事故例と対策
ロボット大会でよく目にしたり聞いたりした事故例と一緒に対策をご紹介。
とにかく安全に使えば便利な電池ですから、安全な使い方を覚えてください。
ケーブル断線によるショート
これはいつどこで起こるかわからないので、防ぎようがないのも事実ではありますが、点検で防げるものも多いので、気をつけて使いましょう。
【対策】
設計時にバッテリーケーブルが断線させられそうな可動部にかかってないようにする。
バッテリーを使用するときに、コネクタが外れてないか、ケーブルが傷ついてないか確認してから使用する。
充電時の過充電による発火(爆発)
電池の充電容量を間違えて過充電、過電流で起きる発火事故です。消防庁のビデオはこれに当たります。ラジコンだと車の12V(シガーライター電源)で充電していて、帰ってきたら車が一台焼けていた例も聞いていますので、充電時には目を離さないでください。
【対策】
適切な充電器を使う。
電池の説明書にある充電上限の電流量を守る。(ほとんどの場合は1A)
工具箱などと一緒に入れて電池を傷つけ発火
私はまだ見たことないですが、やった方の話では、これは超怖いです。かばんがいきなり発火するそうです。本人もまさか発火するとは思わずというところなので、相当パニックになります。その方は工具と一緒の入れ物に電池を放り込んで、ドライバーが電池に刺さったとのこと。リポ電池と工具を分けて入れるなど気をつけていれば防げた事故ですね。
【対策】
リポ保管袋などにいれ、工具とは離す。ガラス瓶などの壊れやすいケースには絶対入れない。
ふくらんだLipoをそのまま使い続け発火
ふくらんでしまったLipoはすでに壊れています。使い続けると発火の原因になります。
【対策】
定期的に厚みを確認。膨らんでいたら充電も使用も避け、速やかに安全に廃棄。
その他安全のために:冷却スプレーは使わないで!
ロボット大会でよく見かけるのが、ロボットのモーター冷却にと、冷却スプレー缶を使う方。可燃性のガスのものを使っている学生が多いので、運営役員はとても怖い思いをしています。先生に言ってもぽかーんとされることも多いし、学生に言っても、冷やすものがないからと拒否られて困ることも。ちょっとした火花で爆発しますので、本当にやめてください。お願いします。(-人-)
難燃性のガスのスプレー缶もありますし、扇風機と言う手もあります。
もっといいのは、ちゃんと勉強してモーターを熱くしない制御や設計をすることです。
安全に移動と保管をするために
ロボット連れて世界中に行く機会も増えてきた昨今、保管については、リポ保管バッグ(リポ袋とも言います)なるものを使うのが一般的です。
これは発火を防ぐものではありませんが、万が一発火をしてしまった時に消防士と同じ防火布を使って作られていますので、延焼を防ぐことができます。
アールティではリポを携行するときは常にこの袋に入れて持ち歩きます。
保管は、リポ保管バッグでもいいですし、燃え移りにくい、割れにくい入れ物に入れてください。
透明できれいに見えるからとガラスのキャニスター瓶に入れてきたお客様がいらっしゃったときは、それが爆発したらガラスが飛び散ってほとんど爆弾と一緒なので、やめてくださいとお話したこともあります。
ではどんな入れ物ならいいか?ちゃんと絶縁されている電池なら、しっかりしたお菓子の缶などでもよいでしょう。缶を使う場合は、缶の金属部分に電池の端子が触れてショートしないようにだけ気をつけてください。
長期保管する場合
リポ電池を充電してしまいましょう。使い切ったままで保管しないように注意してください。リポ電池は、容量がなくなると自分で自分を食い尽くしてしまいます。(ふくらんでガスが発生するのでダメになっちゃったのがわかります。)
これを防ぐために、満充電でもいいですし、半分から7~8割くらいの容量は充電してから保管してください。どんどん電池は減りますので、定期的に電圧を見るのも忘れずに。
廃棄するには
例えば、アールティはオフィスが千代田区にあるので、「千代田区 リチウム電池 処分」と検索すると「蛍光管等」として処分すればいいことが分かります。
(「電池(小型充電式電池)」に該当します。リチウム一次電池ではありません。)
千代田区ホームページ ごみ分別辞典
さらに「蛍光管等」について確認すると、処分方法の詳細が分かります。
千代田区ホームページ 蛍光管等の出し方
(2021年12月13日追記)
ごみとして廃棄する場合は、塩水(塩分濃度は海水の3.5%以上で)につけて1ヶ月ほど放置してから不燃ごみとして出します。(成分としては可燃ですが各自治体に確認してください。不燃ごみにしてほしいという地域が多いようです。)このときもガラス瓶などの割れやすいものには入れないでください。
【参考リンク】
UAS測量調査協議会「リチウムイオンバッテリーの安全な取り扱いと廃棄について」
Fruitful Hobby「LiPoバッテリーの処分方法を行政に確認しました」
(2021年12月13日追記)
リサイクルに出す場合は、「充電式リサイクル協力店くらぶ」などのリサイクルボックスで回収されています。 各地域のリサイクル協力店は、電池工業会のホームページなどで紹介されているので調べて見てください。ちなみに、リサイクルに出すときには、ショートを防ぐため各電極はテープなどで完全に絶縁してください。
Lipoバッテリーと比べて壊れにくいLiFe
最近では、LiFe(リフェと読みます)といった発火しにくい安全なタイプの電池も出ていますので、LiPoよりちょっと重いですが安全と言う意味ではお勧めです。
ぜひ皆さん、電池は正しく、安全に使いましょう。
アールティからの切なるお願いです。